2013年11月15日金曜日

我が国のアスリートのドーピングへの意識の現状は??

スポーツファーマシストは、日本薬剤師会と日本アンチ・ドーピング機構が認定する、世界で唯一のドーピング薬に関する認定薬剤師資格です。いろいろな方へのアンチ・ドーピングの啓蒙なども期待されています。そのため、我が国においてどのような層がドーピングやアンチ・ドーピングに興味を持っているのかなどの実態調査はほとんどありませんでした。今回の報告は、それに関してで、愛媛県のグループからのものです。

Identification of the role of the sports pharmacist with a model for the prediction of athletes' actions to cope with sickness
T. Yamaguchi, I Horio, R. Aoki, N. Yamashita, M. Tanaka, F. Izushi, Y. Miyauchi, H. Araki
Yakugaku Zasshi 2013; 133: 1249-1259.
PMID: 24189566

以下、論文内容の一部を要約。大変興味深い内容が多くあるので、文献に直接あたるのをおすすめします。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/133/11/133_13-00186/_article

・2011年度国民体育大会出場の愛媛県選手260名、四国インカレ出場予定の大学競技スポーツクラブ所属選手105名の系365名を対象としたドーピングに関するアンケート調査。有効回答数は350件。
・全体として、ドーピング認知度が高く、ドーピングに対しても否定的であった。
男性は女性に比べて、ドーピングに対して関心が高いが、その反面アンチ・ドーピング意識も強い。
 >女性選手は男性選手に比べて闘争心・勝利意欲・自信・判断力が低い反面、自己実現・協調性が高いという報告や、男性のほうが女性よりも冷静な判断・精神的強さが高いなどの報告から説明がつくだろう。
・チーム競技選手よりも個人競技選手の方がアンチ・ドーピングの意識が高い。ただし、今回の調査では個人競技者の方が男性の割合が多いため、性別が交絡因子になっている可能性も。
・ロジスティック回帰分析から、年齢が高いほどドーピングに興味を示すと予測される。
軽症時の対応に関して、おおむね「病院を受診」「常備薬を使用」「何もしない」が多く、「薬局で対応」は、ごく少数。
軽症時の薬剤選択に関して、「広告を参考」が最も多く、ついで「薬剤師に相談」・「低価格」が続く。
・セルフメディケーションを行う理由として、「受診時間がない」が多く、ついで「市販薬で十分」がつづく。
・薬剤選択時の相談サービスについては、過半数以上が利用しない。
アンチ・ドーピングの意識が高いほど、
  「病院を受診」が多い
  「薬剤師に相談」が多い
  「薬の相談サービスを利用する」が多い
 と予測される。


2013年11月7日木曜日

OTC薬に含まれるエフェドリンでもドーピング違反!!

エフェドリンやその代謝物は、その興奮作用のために、ドーピング規定で一定濃度以上の検出が禁止されています。これらの物質は、ドラッグストアなどで気軽に購入できるかぜ薬や漢方などにも含有されているため、それを知らずにドーピング違反になってしまう”うっかりドーピング”が問題になっています。さて、ドラッグストアで気軽に購入できる薬(OTC薬)を飲むとどれくらいエフェドリンが検出されるのでしょうか?

*エフェドリンの類縁体としてcathin、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリンがあります。
それらのWADA2013, WADA2014での尿中での閾値(この値を超えるとドーピングとされる)は以下のとおり。各自ご確認ください。

エフェドリン、メチルエフェドリン:10 microg/mL
cathine:5 microg/mL
プソイドエフェドリン:150 microg/mL

The relevance of the urinary concentration of ephedrines in anti-doping analysis: determination of pseudoephedrine, cathine, and ephedrine after administration of over-the counter medicaments.
S. Strano-Rossi, D. Leone, X. de la Torre, F. Botre
Ther. Drug Monit. 2009; 31: 520-526.
PMID: 19571776

以下、抄録の要約。

・9人の健常者にエフェドリン含有OTC薬を飲んでもらい、尿中のエフェドリンやエフェドリン関連物質の濃度を測定した。
・その結果、プソイドエフェドリンやcathinの尿中濃度は個人差が大きいことがわかった。この個人差は、体重や性別には依らないものであった。

・プソイドエフェドリンのOTC薬での典型的な投与量は60 mg程度である。
・プソイドエフェドリン60 mg投与により、9人中2人で、尿中に5 microg/mL以上のcathinと100 microg/mL以上のプソイドエフェドリンが検出された。
・プソイドエフェドリン120 mg投与により、7人中4人で、尿中に5 microg/mL以上のcathinが検出された。
・薬物動態学的に平衡状態になるまで120 mgのエフェドリンの投与により、尿中のcachin、プソイドエフェドリンは5 microg/mLおよび100 microg/mLを超えた(ピーク値14.8 microg/mL、275 microg/mL)。
・尿中のエフェドリン関連物質の濃度には非常に幅があるが、尿比重やクレアチニン補正後でもやはり個人差が大きかった。

2013年11月6日水曜日

お酒を飲むと、男性ホルモン摂取を疑われる!?

ドーピングとして規制されている薬物の中には、生体内に存在しているものもあります。例えば、テストステロン。いわゆる男性ホルモンで、筋肉の増強作用によりドーピングとして禁止されていますが、生体内にも存在するホルモンです。ですので、検査の際には摂取したテストステロンなのか、もともと体の中にあった(内在性の)テストステロンなのかを判断する必要があります。そのひとつの指標が、T/E比です。Tはテストステロン、Eはエピテストステロンを表しています。つまり、T/E比とはテストステロンの尿中濃度をエピテストステロンの尿中濃度を割ったものです。この数値が一定以上であると、テストステロンを摂取したのではないか?と疑われます。実はこのT/E比、アルコールの摂取で値が上昇してしまう、というのが本報告です。

Effect of ethanol on the ratio between testosterone and epitestosterone in urine.
O. Falk, E. Palonek, I. Bjorkhem
Clin. Chem. 1988; 34: 1462-1464.
PMID: 3390919

以下、抄録の要約。

・エタノール摂取はT/E比を上昇させる。
4人の健常男性ボランティアにおいて、110-160g(2g/kg体重)の摂取で、尿T/E比が1.14 +/- 0.07から1.52 +/- 0.09へ上昇した。
尿T/E比の上昇率は、30-90%(平均41%)と幅があった。

2013年11月5日火曜日

高血圧や不整脈に使う薬が運動機能を抑制する!

高血圧や不整脈に使われる薬の一つの分類にbeta受容体遮断薬があります。これはbetaブロッカーとも呼ばれるもので、古くから使われている薬です。いろいろな種類があり、それぞれ特徴がありますが、いずれにせよbeta受容体を遮断することにより薬理作用を発揮します。一方、beta受容体の遮断により、手の振戦を抑制することから一部の競技ではドーピング薬として指定されていますが、運動機能への影響は??

Beta-adrenoreceptor blockade and exercise. An update.
M.A. Van Baak
Sports Med. 1988; 5: 209-225.
PMID: 2897710

以下、抄録の要約です。

beta受容体の遮断により、血行動態・代謝・イオンバランスなどに影響がある。
・beta遮断薬投与後、血圧・心拍が減少する。
・強度の強い運動時には、活動している骨格筋への血流も減少する。
・脂肪細胞における脂肪分解や中性脂肪の分解が抑制されるため、エネルギー源である遊離脂肪酸も減少する。
・食事をした場合は血中グルコース濃度は変化ないが、空腹時の高強度の運動ではbeta遮断薬投与により血中グルコースが減少する。
・beta遮断薬投与により血中乳酸濃度はやや低くなる傾向があるが、血中カリウム濃度は上昇する。
・beta遮断薬は、体温調整にも影響を与える可能性がある。
・以上より、高血圧患者でのbeta遮断薬投与により、最大強度の有酸素運動能は減少する。
この運動能減少はbeta1受容体選択的遮断薬よりもbeta受容体非選択的遮断薬の方が顕著に観察されるが、すべてのbeta受容体遮断薬投与により見られるものである。
・一方、心不全患者へのbeta遮断薬投与では運動能は向上する。