2013年10月30日水曜日

クレンブテロールが含まれるお肉の調理後、クレンブテロールはどれくらい残っている??

クレンブテロールは、畜産動物に投与することによって筋肉増強作用を示します。それだけならば問題も少ないのですが、この物質は熱耐性でもあり、調理後の肉にもクレンブテロールが残ってしまいます。これにより、ドーピング違反になったり食中毒になったりと問題が起こります。
ではどれくらいの熱耐性なのか?それを検討した報告です。

The effect of cooking on veterinary drug residues in food: 1. Clenbuterol.
M.D. Rose, G. Shearer, W.H. Farrington
Food Addit. Contam. 1995; 21: 67-76.
PMID: 7758633

題名:家畜に用いた薬物の組織内残渣における調理過程の影響:クレンブテロール

以下、要約。

クレンブテロールは、100℃の水の煮沸に対して安定である。
260℃の油では、半減期5分で分解する。
ボイルやロースト、フライ、電子レンジの調理において、がっちりフライをした以外はすべてクレンブテロールは分解せず残っていた。
・肉汁などにはほとんどクレンブテロールが検出されなかった。
・クレンブテロールは、生肉に均一には検出されなかった。


2013年10月29日火曜日

アスリートでは副作用がでやすい?スタチンの意外な側面

どんなアスリートも、人ですので、いろいろな病気にかかります。脂質異常症で良く使われるスタチンは横紋筋融解症などの骨格筋への副作用が知られていますが、アスリートでの忍容性はどうなのでしょうか。

Professional athletes suffering from familial hypercholesterolaemia rarely tolerate statin treatment because of muscular problems.
H. Sinzinger, J. O'Grady
Br. J. Clin. Pharmacol. 2004; 57: 525-528.
PMID: 15025753

題名:家族性高コレステロール血症のプロアスリートでは、筋肉に関する副作用のためにスタチン治療に対して忍容性が低い

以下、抄録の要約。

筋肉関係の副作用は、スタチンによる副作用の主なものの一つであり、運動中や運動後に起こりやすいことが知られている。
・最近8年間に22人の家族性高コレステロール血症のプロアスリートを観察しており、それぞれ異なったスタチンで治療しようとした。
22人のうち、6人がスタチン治療を継続できた。
スタチン治療を継続できた6人のうち3人は、最初に処方したスタチンで副作用がなく治療継続できた。(ブログ著者注:残りの3人は、副作用があるものの治療継続できたと思われる。)
・スタチンとしては、アトルバスタチン・フルバスタチン・ロスバスタチン・プラバスタチン・シンバスタチンを使用した。
プロアスリートのようなトップスポーツ選手では、スタチン治療を副作用なく受け入れることが出来るのはおおむね20%程度であると考えられる(上述の22人中3人を基に)。

2013年10月28日月曜日

アスリートの高血圧治療で運動持久力が低下する!?

The effects of verapamil and propranolol on exercise tolerance in hypertensive patients.
J. Mooy, M. van Baak, R. Bohm, R. Does, H. Petri, J. van Kemenade, K.H. Rahn
Clin. Pharmacol. Ther. 1987; 41: 490-495.
PMID: 3552358

題名:高血圧患者における運動持続性に対するベラパミルとプロプラノロールの効果

以下、抄録の要約。

試験の概要
・single-blind, placebo-controlled crossover試験
・本態性高血圧の8人の患者を対象。
  ベラパミル 450 +/- 30 mg/day
  プロプラノロール 160 +/- 20 mg/day
・クロスオーバーはランダムに施行。
・運動試験は、エルゴメーターによる自転車運動の持久性試験。

試験の結果
・降圧作用は両群において、同様であった。
ベラパミル、プロプラノロールどちらも心拍数を減少させたが、プロプラノロールがより顕著であった。
・運動持続時間は、
  プラセボ群:57 +/- 11 分
  プロプラノロール群:32 +/- 7分
  ベラパミルは運動持続時間に影響がなかった。
・以上より、プロプラノロールは高血圧患者において、運動耐容能を低下させると考えられる。


2013年10月23日水曜日

毛髪からクレンブテロールを検出!

Hair analysis, a reliable and non-invasive method to evaluate the contamination by clenbuterol.
J.Y. Jia, L.N. Zhang, Y.L. Lu, M.Q. Zhang, G.Y. Liu, Y.M. Liu, C. Lu, S.J. Li, Y. Lu, R.W. Zhang, C. Yu
Ecotoxicol. Environ. Saf. 2013; 93: 186-190.
PMID: 23607973

題名:毛髪分析:クレンブテロール摂取を評価するための信頼性の高い非侵襲的手法

以下、抄録の要約です。

・食用家畜へのクレンブテロールの違法な使用が、今日どんどんと問題になってきている。
・毛髪からLC-MS/MSを用いてクレンブテロール残留を検出方法を開発した。
検出限界は、0.5 ng/gである。
食用豚にクレンブテロールを2週間、340 microg/day投与したところ、クレンブテロール投与終了後1-2ヶ月まで毛から高濃度のクレンブテロールを検出することができた。
クレンブテロール投与終了5ヶ月においても、豚の毛の先端から3.31 ng/gのクレンブテロールを検出できた。
上海在住のボランティアのうち60.3%から、毛髪においてクレンブテロールが検出された(0.05 ng/g以上)。
・以上より、食肉用豚やヒトの毛髪から高い信頼性でクレンブテロールを検出することができた。
・特に上海で供給されている食用豚はクレンブテロールに汚染されているリスクが高いかもしれない。


2013年10月22日火曜日

クレンブテロール摂取の豚には、いつまでクレンブテロールが残っているのか?

Clenbuterol residues in pig muscle after repeat administration in a growth-promoting dose.
J. Pleadin, A. Vulic, N. Persi, N. Vahcic
Mead Sci. 2010; 86: 733-737.
PMID: 20667663

題名:成長促進作用が出現するクレンブテロール量を、ブタに反復投与した際のクレンブテロールの残渣

以下、要約。

クレンブテロールは、20 microg/kg/dayの投与で豚に対して同化作用を発揮する。
・この際のクレンブテロールの薬物動態はあまりわかっていない。
・20 microg/kg/dayを28日間、反復投与し、その直後・3日後・7日後・14日後においてクレンブテロールが豚の筋肉にどの程度、残っているのかを検討した。
断薬直後:4.40 +/- 0.37 ng/g
3日後:0.49 +/- 0.22 ng/g
7日後:0.10 +/- 0.02 ng/g
14日後:すべてのサンプルで0.1 ng/g 未満 = 検出感度以下。
・以上より、クレンブテロールを摂取された豚を食べる場合、豚がクレンブテロールを摂取後7日以内であれば、ヒトもクレンブテロールを摂取してしまう。

2013年10月21日月曜日

信じる者は救われる!?プラセボ薬で競技パフォーマンスが上昇!

"Because I know it will!": placebo effects of an ergogenic aid on athletic performance
M. McClung, D. Collins
J. Sport Exerc. Psychol. 2007; 29: 382-394.
PMID: 17876973

題名:"その薬は効くってわかってるから!": アスリートのパフォーマンスにおける、パフォーマンスを上げる処置のプラセボ効果

以下、抄録の要約

・ドーピング薬が効くと信じているからこそパフォーマンスが上昇するのかもしれないという報告がある。

・「この薬は効くよ!」と伝えた場合と伝えない場合で、プラセボを摂取したアスリートに1000m走ってもらった。

・「この薬は効くよ!」と伝えるとパフォーマンスが上昇したが、何も伝えない場合にはパフォーマンスは上昇しなかった。


薬剤師がスポーツドーピングを勉強する意味はあるのか?

アスリートが薬の相談に来るケースは、現実的にはあまりありません。しかし、私は薬剤師が一つの専門としてスポーツドーピングを勉強する意味があると考えています。

薬剤師の仕事って何だろう?と考えた時、結局のところ、「患者の生活や個性に合わせた薬物治療の最適化・最大化」にいきつくと考えています。その先に患者の笑顔があると信じています。


2013年10月18日金曜日

栄養サプリメントでドーピング!?成分表を信じていいの?

アスリートは、しばしばサプリメントを用いることがあります。もちろん成分表がついていますので、自分でドーピング禁止薬が入っていないか、もしくはスポーツファーマシストなどの専門家が成分表から安全かどうかを判断することは可能です。ただし、その成分表に嘘がなければ・・・。

サプリメントの成分表に嘘があれば、成分表上では禁止薬物が入っていなくても、実は禁止薬物が混入していて、ドーピングになってしまう!なんてことも十分ありえます。

栄養サプリメントの成分表の信ぴょう性を確かめた論文たちの一部をまとめました。他にもたくさん類似の報告はあります。

成分表に未表示で、意図しないドーピングであったと主張したところで、ドーピング違反を免れることはありません。サプリメント選びは慎重に・・・。

それぞれの論文を要約しています。

2013年10月17日木曜日

クレンブテロール摂取後に中毒症状!!2例の症例報告

Myocardial ischemia associated with clenbuterol abuse: report of two cases
D.S. Huckins, M.F. Lemons
J. Emerg. Med. 2013; 44: 444-449.
PMID: 22633759

題名:クレンブテロールの乱用と関係する心筋虚血:2症例の報告

背景:クレンブテロールはアルブテロールと類似の、長時間作用型beta2受容体アゴニストの経口剤であり、近年、ボディービルディングやアスリート界で乱用されてきている。

目的:2人の若い健常男性のボディビルダーがクレンブテロールを乱用し、心筋虚血をおこした2例を報告する。

症例報告:18歳と22歳の2人の男性ボディビルダーがクレンブテロール摂取直後、動悸・吐き気・嘔吐・胸痛・発汗・頻脈により救急部へ搬送された。どちらの患者も洞性頻脈であり、そのうち1人はbeta遮断薬やカルシウムブロッカーに対して比較的抵抗性を示した。どちらの患者も、トロポニンレベルが上昇しており、18歳の患者は最高で4.17 ng/mL(通常、0.04 ng/mL未満)だった。また、その患者は、カテーテル法や心臓MRI検査で、冠動脈に異常は見られなかった。さらに両患者ともエコー上、異常は見られなかった。頻脈は徐々に解消され、無事に回復した。これらの患者の心筋虚血の原因はよくわからない。

結論:救急医は、クレンブテロールの乱用やオーバードーズによる臨床症状に気を付けなければならない。心筋虚血や不整脈といった症状がでることもある。考えられる治療法としては、輸液・酸素吸入・アスピリン・beta遮断薬・ベンゾジアゼピンなどがあるが、効果的かは証明されていない。

2013年10月16日水曜日

デスモプレシンで血漿希釈!?デスモプレシンの隠蔽薬としての顔

Desmopressin and hemodilution: implications in doping
F. Sanchis-Gomar, V.E. Martinez-Bello, A.L. Nascimento, C. Perez-Quilis, J.L. Garcia-Gimenez, J. Vina, M.C. Gomez-Cabrera
Int. J. Sports. Med. 2010; 31: 5-9.
PMID: 19885778

題名:デスモプレシンと血漿希釈:ドーピングへの関与

スポーツにおいて血液ドーピングは物理的なパフォーマンスを上昇させる。これが、アンチ・ドーピング機構が選手に血液検査をする理由である。血漿増量剤は、アンチ・ドーピング規定に抵触するようなことを行った場合の血液学的検査値の人工的な上昇を抑制させることにより、数値をごまかすということで禁止リストに加えられている。

本研究の目的はデスモプレシンが誘導する血漿希釈が血液ドーピングを検出する際に使われる血液学的検査値の濃度を変えるかどうかを検討することである。

本研究は、intra-subject crossover studyとして設計された。

静脈血液サンプルを8人のphysically activeな男性から採取した。

第一回目の採取では、1.5 Lのミネラルウォーターと4.3 microg/kgのデスモプレシンの投与を行った。第二回目の採取では、1/5Lのミネラルウォーターのみの投与を行った。

ヘマトクリット値やヘモグロビン、赤血球数、OFF Hrスコア、グルコース、アルブミン、クレアチニン、総タンパク質を検討した。デスモプレシン投与後では、ヘマトクリット値、ヘモグロビン値、OFF Hrスコアにおいて有意に減少していた。また、グルコース、アルブミン、クレアチニン、総タンパク質では顕著な減少が見られた。しかしながら、本ケースではすべての値が生理的の下限よりもさらに下の値を示した。デスモプレシンの投与は血漿希釈に対して極めて効果的であった。この化合物をWADAの禁止リストへ入れるべきであると考えている。


2013年10月14日月曜日

beta2アゴニストのドーピング薬としての概要

beta2アゴニスト、つまりbeta2受容体作動薬はドーピングの禁止リストに記載されている薬剤です。つまり、この薬を使用するとドーピング違反となります。しかも、競技外時も常にドーピング検査対象です。ただし、薬剤によっては使用可能な場合もあるので、確認が必要です。

beta2アゴニストは、臨床的には喘息によく使われます。
投与してからの作用持続時間によって、長時間作用型はLABA(Long-acting beta agonist)、短時間作用型はSABA(Short-acting beta agonist)などと分類されています。それぞれの喘息治療における立ち位置は別に記載することとして、今回はドーピング薬としてのbeta2アゴニストについて解説します。

2013年10月13日日曜日

FIFA U-17 ワールドカップ2011でのドーピング事件

Adverse analytical findings with clenbuterol among U-17 soccer players attributed to food contamination issues.
M. Thevis, L. Geyer, H. Geyer, S. Guddat, J. Dvorak, A. Butch, S.S. Sterk, W. Schanzer
Drug Test. Anal. 2013; 5: 372-376.
PMID: 23559541

題名:FIFA U-17 ワールドカップ大会におけるクレンブテロールの食べ物への汚染

これまでに、家畜への成長促進剤の使用が高い頻度で報告されてきている。違法的であるが畜産業にメリットが有る成長促進剤のうち、クレンブテロールは成分、薬理作用、代謝、排泄の点で特徴的であると考えられている。特に、家畜動物の食肉部位においてクレンブテロールが蓄積するために、エリート選手がそれを口にするという問題が起こっている。

2011年5月のメキシコ代表サッカーチームへの競技外検査においてクレンブテロールが5件、検出されたことを発端として、FIFAは2011年のFIFA U-17 ワールドカップの開催国であったメキシコでの食物汚染問題について検討を始めた。

同化作用物質の検出を目的に採取した208個のregular doping controlサンプルと、トーナメント中のチームが滞在したホテルで採取した47個の食肉食材サンプルについて、クレンブテロールの含有を検討した。47の食肉食材サンプルの内、14のサンプル(30%)において、クレンブテロールが0.06-11 microg/kgの濃度で検出された。208のregular doping controlサンプルの内109個のサンプル(52%)において、1-1556 pg/mlの濃度でクレンブテロールが検出された。
また、参加24チームのうち、クレンブテロールが検出されなかったのはたった5チームのみだった。そのうちの少なくとも1チームはメキシコのクレンブテロール汚染を知って、厳格にno meatな食事を実施していた。

ドーピング検査サンプルから異常な高頻度でクレンブテロールが検出されたことから、この検出されたクレンブテロールが食事由来のものであることが強く示唆され、どのサッカー選手も制裁されなかった。

しかし、エリート選手は、理由がどうあれ禁止薬剤に対して陽性反応が検出された時には厳しい結果が待っていることを知らなければならない。政府が、畜産業界における違法なクレンブテロールの使用に対して厳正なる対処をとる必要がある。

2013年10月12日土曜日

ジニトロフェノール:命と引き換えにまで痩せたいのか?

2,4-ジニトロフェノール(DNP)は、体を構成する細胞達のエネルギー産生を阻害する物質です。

細胞は通常、ATPという高エネルギー化合物をエネルギーとして使って体を動かしています。筋肉を動かすのにも、細胞が増えるにも必須のエネルギー源です。

このエネルギー源であるATPは、食べ物として摂取する糖(グルコース)や脂肪やアミノ酸の一部から作られます。その作られる方法には2つあります。

ドーピング薬としてのグリセロールは尿検査で検出できるのか?

Urinary excretion of exogenous glycerol administration at rest.
K. Koehler, H. Braun, M. de Mareesm H. Geyer, M. Thevis, J. Mesterm W. Schaenzer
Drug Test Anal. 2011;3:877-882.
PMID: 22012747

 2010年以来、グリセロールは世界ドーピング機構(WADA)により隠蔽薬として規定され、その投与はスポーツにおいて禁止されている。検出方法は存在するが、投与後に尿中に排泄されるかについてはほとんどわかっていなかった。

 14人の訓練された自転車競技者(27.0 +/- 5.4 歳; VO2max: 63.9 +/- 8.5 ml/kg/min)に対して、グリセロール(1 g/kg 体重 + 25 ml 水/kg体重)とプラセボ( 25 ml 水/kg 体重)を投与するクロスオーバー試験を実施した。血液サンプルと尿サンプルは、投与前および投与後2.5時間、4時間、6.5時間において採取した。さらに、尿中サンプルは投与後24時間まで採取した。
 
 グリセロール投与後2.5時間で、尿中グリセロール濃度は10.9 +/- 15.5から、50581 +/- 23821 microg/mlへ上昇した。プラセボ群では、尿中グリセロール濃度は26.8 +/- 31.3 microg/mlを超えなかった。グリセロール投与群における尿中濃度は、16.9 +/- 1.0時間後まで、プラセボ群に対して有意に上昇していた。プラセボと比較して、グリセロール投与群は顕著な体重増加(0.69 +/- 0.42 v.s. 0.27 +/- 0.44 kg; p<0.05)をもたらした。また、尿排泄量を減少させた(972 +/- 379 v.s. 1271 +/- 387 ml; p<0.05)。また、グリセロール投与によってヘモグロビン量(グリセロール投与、-0.60 +/- 0.28 g/dl, -1.7 +/- 0.7%; プラセボ、-0.29 +/- 0.39 g/dl, -0.9 +/- 1.1%)とヘマトクリット値も顕著に減少した。

 以上より、本研究はグリセロール投与後数時間以内で尿中にグリセロールを検出することができることを明らかにした。グリセロール投与後2.5時間の時点でヘモグロビン量やヘマトクリット値が顕著に減少するが、グリセロールによる血漿量増加はプラセボ群との比較ではそれほど重要ではないのかもしれない。


2013年10月11日金曜日

クレンブテロールに汚染された食品摂取による"うっかりドーピング"と意図的なクレンブテロール摂取を見分ける!?

Does the analysis of the enantiomeric composition of clenbuterol in human urine enable the differentiation of illicit clenbuterol administration from food contamination in sports drug testing?
M. Thevis, A. Thomas, S. Beuck, A. Butch, J. Dvorak, W. Schanzer
Rapid Commun. Mass Spectrom. 2013;27:507-512.
PMID:23322656


題名:尿中のクレンブテロールの光学異性を分析することで、クレンブテロールに汚染された食品摂取によるものなのか意図的に摂取したものなのかを判定することは可能なのか?

背景:クレンブテロールは肺疾患においてヒトや動物に承認されている薬である。承認薬であるにもかかわらず、クレンブテロールの成長促進作用を求めて、プロ・アマチュア選手や家畜へのクレンブテロールの誤使用が頻繁に報告されてきている。そのため、クレンブテロールに汚染された食品を食べてしまいクレンブテロールが検出されたのか、意図的にサプリメントとして摂取したのかを判断するストラテジーが求められている。

方法:クレンブテロールを治療量投与した場合の尿中クレンブテロールの光学異性の組成を検討した。治療に用いられるクレンブテロールはラセミ体であるが、(+)体は動物組織に蓄積することが知られているため、治療用クレンブテロールと食品中クレンブテロールに関して検討した。

結果:治療用クレンブテロールを使用した際は少なくとも24時間までは尿中にラセミ体のクレンブテロールが検出された。一方、クレンブテロールに汚染された食品を摂取したと思われる尿サンプルでは、(-)体が少なかった。

結論:クレンブテロールの光学異性の相対量を決定することにより、汚染食品経由のクレンブテロールの摂取を示すことができた。しかし、動物組織における(-)体クレンブテロールの欠除は時間依存的であり、動物がクレンブテロールを摂取してから屠殺までの時間などの要素も考慮に入れなければならず、決定的に判断できるわけではない。


2013年10月10日木曜日

beta2アゴニストは自転車競技においてパフォーマンスをあげるのか?

Inhaled salbutamol does not affect athletic performance in asthmatic and non-asthmatic cyclists.
S. Koch, M.J. Macinnis, B.C. Sporer, J.L. Rupert, M.S. Koehle
Br. J. Sports Med. 2013
PMID: 24100289

題名:吸入サルブタモールは、喘息・非喘息自転車競技社においてパフォーマンスに影響を与えない。

背景:サルブタモールは喘息のあるなしで、呼吸機能や運動パフォーマンスに異なった影響を与えるかもしれない。
目的:吸入サルブタモールの肺機能への影響を比較するために、EVH challengeに陽性であったアスリートと陰性であったアスリートの、自転車運動中の運動パフォーマンスや呼吸機能を検討した。
方法:クロスオーバーRCT試験。EVH陽性14人、陰性35人、計49人のwell-trainedな男性アスリートに対して、サルブタモール400ugまたはプラセボ吸入一時間後、エルゴメーターにて10kmのタイムトライアルを行った。吸入直前と吸入後30分において呼吸機能を測定した。
結果:サルブタモールの吸入によって、プラセボと比べて顕著な肺機能の上昇が見られたものの、運動パフォーマンスには影響を与えなかった。喘息・非喘息ともに有意な差は見られなかった。
結論:喘息・非喘息にかかわらず、サルブタモールの吸入は肺機能を顕著に上昇させるが、運動パフォーマンスの改善にはつながらなかった。EVH challengeの結果に関わらず、サルブタモールは肺の換気機能や運動パフォーマンスに影響を与えなかった。

EVH challenge: スポーツ喘息を診断するための指標。