2013年12月13日金曜日

非選択的beta受容体遮断薬は筋肉の運動能を低下させる!

スポーツ選手に対して降圧薬としてbeta受容体遮断薬を用いる際、いくつかの要素によってスポーツのパフォーマンスが低下してしまう現象が知られています。病態によってはbeta受容体遮断薬が必須である場合もありますが、そうではなく本態性高血圧のみの場合はbeta受容体遮断薬をスポーツ選手に対しては用いづらい印象があります。古い論文ですが、この現象をヒトに対して筋肉の生検をして検討した報告があります。現在では、倫理面から実行が難しいのではないか?と思いますので、非常に貴重な結果です。


Effect of beta 1-selective and non-selective beta-blockade on work capacity and muscle metabolism.
Clin. Physiol. 1986; 6: 197-207.
P. Kaiser, P.A. Tesch, M. Frisck-Holmberg, A. Juhlin-Dannfelt, L. Kaijser.
PMID: 3006981


以下、抄録の要約。

6人を対象とした、二重盲検クロスオーバー試験。
・プラセボ
 非選択的beta受容体遮断薬であるプロプラノロール 40, 80, 160 mg
 選択的beta1受容体遮断薬であるアテノロール 25, 50, 100 mg
 を投与後に、自転車の最大運動により運動能を計測した。
・プラセボ、80 mgプロプラノロール、50 mgアテノロール投与後の運動後、筋肉の生検を行い、以下の値を測定した。
 ATP, クレアチンリン酸, グルコース-6-リン酸(G6P)、乳酸
・結果として、プロプラノロール投与後が最も運動能が低下し、アテノロールもプラセボ群に比較して低下していた。
・プロプラノロール群とアテノロール群において、プラセボ群よりも低下した数値は以下のもの。
 プロプラ群とアテノロール群で同様に低下した:心拍、Vo2max、ATP、クレアチンリン酸
 プロプラ群のみが顕著に低下した:運動能、G6P




(感想)

筋肉を動かすエネルギーとして、ATPが存在します。
最大運動時、最初の数十秒程度は、以下の反応によりATPを得ます。


クレアチンリン酸 + ADP  → クレアチン + ATP


その後、筋肉内に存在するグリコーゲンというエネルギー貯蔵物質から、G6Pを生成し、
解糖系というシステムにより、ATPを得ます。


グリコーゲン  → 多くのG6P → 解糖系によりATP生成


beta2受容体の刺激が、グリコーゲンからATPを生成する過程を促進することが明らかにされています。

プロプラ群とアテノロール群で、プラセボに比較して同様に低下した心拍、Vo2maxはbeta1刺激による作用であると言えます。プロプラ群のみで顕著に低下したものにG6Pが挙げられていますが、これはbeta2受容体を遮断したことによると思われます。

筆者らは、非選択的beta受容体遮断薬プロプラノロールのみが運動能を低下させた原因は、beta2受容体遮断による血管収縮などに伴う、筋肉への酸素供給量低下によるものであると推測しています。筋肉内でもやはり好気的にATPが生成されるということなのでしょうか。ここらへんの解釈は結構難しいです。と、お茶を濁します・・・。

0 件のコメント:

コメントを投稿