2013年11月5日火曜日

高血圧や不整脈に使う薬が運動機能を抑制する!

高血圧や不整脈に使われる薬の一つの分類にbeta受容体遮断薬があります。これはbetaブロッカーとも呼ばれるもので、古くから使われている薬です。いろいろな種類があり、それぞれ特徴がありますが、いずれにせよbeta受容体を遮断することにより薬理作用を発揮します。一方、beta受容体の遮断により、手の振戦を抑制することから一部の競技ではドーピング薬として指定されていますが、運動機能への影響は??

Beta-adrenoreceptor blockade and exercise. An update.
M.A. Van Baak
Sports Med. 1988; 5: 209-225.
PMID: 2897710

以下、抄録の要約です。

beta受容体の遮断により、血行動態・代謝・イオンバランスなどに影響がある。
・beta遮断薬投与後、血圧・心拍が減少する。
・強度の強い運動時には、活動している骨格筋への血流も減少する。
・脂肪細胞における脂肪分解や中性脂肪の分解が抑制されるため、エネルギー源である遊離脂肪酸も減少する。
・食事をした場合は血中グルコース濃度は変化ないが、空腹時の高強度の運動ではbeta遮断薬投与により血中グルコースが減少する。
・beta遮断薬投与により血中乳酸濃度はやや低くなる傾向があるが、血中カリウム濃度は上昇する。
・beta遮断薬は、体温調整にも影響を与える可能性がある。
・以上より、高血圧患者でのbeta遮断薬投与により、最大強度の有酸素運動能は減少する。
この運動能減少はbeta1受容体選択的遮断薬よりもbeta受容体非選択的遮断薬の方が顕著に観察されるが、すべてのbeta受容体遮断薬投与により見られるものである。
・一方、心不全患者へのbeta遮断薬投与では運動能は向上する。

(感想)

beta受容体の刺激により様々な生理現象が起こります。

beta1刺激:心拍数上昇、血圧上昇
beta2刺激:グリコーゲン分解促進→血糖値上昇、気管支拡張、末梢血管拡張
beta3刺激:脂肪細胞における脂肪分解

代表的なものを挙げましたが、他に手の震え(振戦)や顔面の汗、胸部不快感の一部などもbeta受容体を介しているでしょう。

beta受容体遮断薬は、beta1選択的に働くものやその選択性があまりなくbeta受容体を遮断してしまうものなどがあります。薬物治療的には、beta1遮断作用を狙って処方していることがほとんどだと思いますが、beta1選択的といってもやはり他のbeta受容体の遮断作用もゼロではありません。

これらの受容体を遮断することにより、心拍数が抑制され末梢血管拡張が抑制され(骨格筋への血流が抑制され)、血糖値上昇が抑えられ、エネルギーの元のひとつである脂肪分解が抑制されます。以上の作用より、スポーツ選手などの高強度の運動が求められる場合にはその運動能を抑制してしまうということでした。ただし、心不全などの病態時は、病態改善効果のほうが大きいので運動能は回復するということです。

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