2013年10月12日土曜日

ジニトロフェノール:命と引き換えにまで痩せたいのか?

2,4-ジニトロフェノール(DNP)は、体を構成する細胞達のエネルギー産生を阻害する物質です。

細胞は通常、ATPという高エネルギー化合物をエネルギーとして使って体を動かしています。筋肉を動かすのにも、細胞が増えるにも必須のエネルギー源です。

このエネルギー源であるATPは、食べ物として摂取する糖(グルコース)や脂肪やアミノ酸の一部から作られます。その作られる方法には2つあります。



ひとつは解糖系というシステム、もうひとつは酸化的リン酸化というシステムです。解糖系はATPを作るスピードが早いですが、その量が少ないという欠点があります。一方、酸化的リン酸化は大量にATPを合成できますが、それには酸素が必要です。我々が呼吸して体内に入れる酸素のうちの99%以上が、この酸化的リン酸化を中心としたシステムに使われると言われています。

ジニトロフェノールは、この酸化的リン酸化を起こらなくします。専門的にはuncoupler (脱共役剤)と呼ばれる物質の一つで、ミトコンドリアにおけるF-ATPaseの駆動力であるプロトン勾配を壊す作用があります。

酸化的リン酸化がおこらなくなるとどうなるか?一生懸命グルコースなどからATPを作ろうとするのに、つくれない。酸化的リン酸化のシステムの空回りがおこります。酸素がほしいので、呼吸が浅く早くなります。酸化的リン酸化でATPを作れなくする代わりに、熱エネルギーを発生させるので体温が上昇します。

それも通常の体温上昇ではありません。一分間に0.2℃といったような超急激な体温上昇で、最終的には体温45℃などの高温まで達することも有るようです。もちろんそれだけ体温が高くなれば死に至ります。

このジニトロフェノール、実はダイエットに使われていた歴史があります。エネルギー源であるATPを作れなくする代わりに熱エネルギーを産生させる作用で、どんどん体の脂肪を燃やしますので、激烈な体重減少作用があるというわけです。

古くは1930年台、アメリカでやせ薬として使われ始めています。1933年、アメリカだけで10万人以上の人に処方されたという推定もあり、相当ひろくつかわれていた薬のようです。また、第二次世界大戦中には、体の熱産生を促進する作用に目をつけて、旧ソ連軍が兵士に使ったとも言われている薬です。

これだけ危ない薬なのですが、また最近使われ始めています。死亡例が報告されてきています。

Dinitrophenol in weight loss: The poison center and public health safety.
Vet. Hum. Toxicol. 1986;28:574-575

Dying to be thin: A dinitrophenol phenol related fatality.
Vet. Hum. Toxicol. 2004; 46: 251-254

Dinitrophenol oral ingestion resulting in death.
J. Toxicol. Clin. Toxicol. 2002; 40:683

DNP 2,4-dinitrophenol: a deadly way to lose weight.
JEMS 2005; 30: 82-89

A case of fatal dinitrophenol poisoning.
JAMA 1934; 102: 1147-1149

Two deaths attributed to the use of 2,4-dinitrophenol
J. Anal. Toxicol. 2006; 30: 219-222

また、英国食品基準庁からは、死亡例がでているある種のダイエットサプリメントにジニトロフェノールが含まれていることを見出し、警告が出ています。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03710730160
http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03881430160

2013年においても海外ではダイエット薬としてジニトロフェノールを摂取したことによる死亡事故が絶えません。

スポーツ関連では、主にボディビルダーが脂肪を落とすために使うケースがあるようですが、この物質の摂取は極めて危険な行為です。

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