2013年10月12日土曜日

ドーピング薬としてのグリセロールは尿検査で検出できるのか?

Urinary excretion of exogenous glycerol administration at rest.
K. Koehler, H. Braun, M. de Mareesm H. Geyer, M. Thevis, J. Mesterm W. Schaenzer
Drug Test Anal. 2011;3:877-882.
PMID: 22012747

 2010年以来、グリセロールは世界ドーピング機構(WADA)により隠蔽薬として規定され、その投与はスポーツにおいて禁止されている。検出方法は存在するが、投与後に尿中に排泄されるかについてはほとんどわかっていなかった。

 14人の訓練された自転車競技者(27.0 +/- 5.4 歳; VO2max: 63.9 +/- 8.5 ml/kg/min)に対して、グリセロール(1 g/kg 体重 + 25 ml 水/kg体重)とプラセボ( 25 ml 水/kg 体重)を投与するクロスオーバー試験を実施した。血液サンプルと尿サンプルは、投与前および投与後2.5時間、4時間、6.5時間において採取した。さらに、尿中サンプルは投与後24時間まで採取した。
 
 グリセロール投与後2.5時間で、尿中グリセロール濃度は10.9 +/- 15.5から、50581 +/- 23821 microg/mlへ上昇した。プラセボ群では、尿中グリセロール濃度は26.8 +/- 31.3 microg/mlを超えなかった。グリセロール投与群における尿中濃度は、16.9 +/- 1.0時間後まで、プラセボ群に対して有意に上昇していた。プラセボと比較して、グリセロール投与群は顕著な体重増加(0.69 +/- 0.42 v.s. 0.27 +/- 0.44 kg; p<0.05)をもたらした。また、尿排泄量を減少させた(972 +/- 379 v.s. 1271 +/- 387 ml; p<0.05)。また、グリセロール投与によってヘモグロビン量(グリセロール投与、-0.60 +/- 0.28 g/dl, -1.7 +/- 0.7%; プラセボ、-0.29 +/- 0.39 g/dl, -0.9 +/- 1.1%)とヘマトクリット値も顕著に減少した。

 以上より、本研究はグリセロール投与後数時間以内で尿中にグリセロールを検出することができることを明らかにした。グリセロール投与後2.5時間の時点でヘモグロビン量やヘマトクリット値が顕著に減少するが、グリセロールによる血漿量増加はプラセボ群との比較ではそれほど重要ではないのかもしれない。


(感想)

膠質液の読み方は、「こうしつえき」です。注射により体内へ入れます。いわゆる輸液と言われる部類のものです。

輸液には大きく分けて2つあります。ひとつは晶質液(しょうしつえき)、もうひとつが膠質液です。

晶質液は、血管壁を通過することができるような小分子で構成されています。水分を組織へ入れるもしくは血管内容量を増加させて血圧低下を防ぐなど、一般に輸液というと晶質液のイメージを持たれる方が多いと思います。

一方、膠質液は、血管壁を通過することができないような大きい分子で構成されており、血管内浸透圧を上昇させることにより組織中から水を引き入れてくることにより血管内容量を増やします。ですので、治療的に使用する際は出血多量などで循環が不安定な時や脳圧を降下させるためなどに用いられます。膠質液は、血管内容量を上昇させる作用により、血中のドーピング禁止薬の濃度を低下させて検出しにくくする作用があるため、「隠蔽薬」としてWADA規則で禁止されているドーピング薬です。hydroxyethylated starch (HES)やD-マンニトール、アルブミン、デキストラン、グリセロールなどがありますが、これに限定されるものではありません。

グリセロール自体は、トリアシルグリセロール(TG、中性脂肪)の原料でもあるので生体内にも存在する物質です。しかし、ドーピングとして使う際には大量に使用しなければならないので、生体内存在量を遥かに凌駕した量を投与することになります。その結果、グリセロール投与後2.5時間で、なんと通常の5000倍もの量が尿中で検出されるということです。アブストラクトしか読んでいませんが、どうやら結構早めに尿としてダバダバでてしまうような物質のようです。しかし、これだけ検出が簡単ですと、ドーピングとして使う価値がまったくないでしょうね。

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