2012年8月8日水曜日

小青竜湯でドーピング?

Elimination of ephedrines in urine following administration of a Sho-seiryu-to preparation.
K.H. Chan, M.C. Hsu, F.A. Chen, K.F. Hsu
J. Anal. Toxicol. 2009;33;162-166.
PMID:19371465

題名:小青竜湯投与後の尿中へのエフェドリンの排泄

小青竜湯は、風邪に用いる伝統的な漢方薬の中でもよく用いられるものの一つである。小青竜湯の成分の一つに麻黄がある。麻黄の主要な成分であるエフェドリンは、WADAリストにより禁止されている。本研究の目的は、小青竜湯服用後の尿中エフェドリンの排泄を検討し、尿のエフェドリン試験が陽性になるかどうかを検出することである。6人のボランティアに小青竜湯2.5gを単回投与した。尿は48時間まで採取した。尿中エフェドリンは、HPLCにより検出し、排泄の半減期を推定した。結果として、エフェドリンとノルプソイドエフェドリン(これもWADAで禁止されている)は、小青竜湯の単回投与後の尿中に検出された。エフェドリンのピーク濃度は、3.88 +/- 1.87 microg/mL (平均+/- SD)であり、これはWADAの閾値(10 microg/mL)を下回っていた。推定された排泄の半減期はそれぞれ以下のとおりだった。エフェドリン, 5.3 +/- 1.2hr; プソイドエフェドリン, 4.9 +/- 0.9hr ;ノルプソイドエフェドリン, 5.4 +/- 1.8hr。以上より、単回の小青竜湯の服用において、尿サンプルではアンチ・ドーピングの規定に抵触しないと結論付けられた。しかしながら、一日3回、三日間の反復投与では、尿中エフェドリンは13.7 microg/mLとなり、陽性となることも明らかとなった。アスリートは、小青竜湯を反復投与する場合は、注意しなければならない。


2012年8月7日火曜日

ベータ2アゴニストの尿中排泄量とWADAコードでの閾値の関係

Formoterol concentrations in blood and urine: The WADA 2012 regulations.
Eibye K, Elers J, Pedersen L, Henninge J, Hemmersbach P, Dalhoff K, Backer V.
Med. Sci. Sports Exerc. 2012;45;16-22.
PMID:22843108

題名:血中および尿中のホルモテロール濃度:2012WADA規約との関連

目的
我々は、健常者および喘息患者における18microgramの吸入ホルモテロールの単回投与後の尿中・血中ホルモテロール濃度と、健常者における反復投与後の尿中・血中ホルモテロール濃度を検討した。結果は、WADA2012に記載されているホルモテロールの閾値との比較で評価した。

方法
オープンラベルのクロスオーバー試験にて行った。習慣的にbeta2アゴニストを使用している10人の喘息患者と、beta2アゴニストを使用したことがない10人の健常者に18 microgramのホルモテロールを単回投与した。さらに、10人の健常者で、18 microgramのホルモテロール吸入をトータル72 microgramになるまで二時間おきに投与した(この投与量は、WADA2012で規定されている最大投与量の2倍である)。血液サンプルは、ベースライン・投与後30分, 1, 2, 3, 4, 6時間に採取された。尿サンプルは、ベースライン・0-4時間・4-8時間・8-12時間と4時間の蓄尿として採取した。

結果
比重で補正したホルモテロールの尿中濃度の中央値は、単回投与の場合0-4時間でピークで、喘息患者で7.4 ng/mL、健常者で7.9 ng/mLであった。72 microgramになるまで二時間おきに18 microgramづつ投与をした反復投与の場合は、4-8時間でピークとなり、健常者では16.8 microgram/mLが最大値であった。トータル72 microgramのホルモテロール吸入を投与したあとの最大濃度は25.6microgram/mLであった。

結論
ホルモテロール吸入後の尿中・血中濃度に関して、喘息患者と健常者では有意な差はみられなかった。どちらのグループにおいても、非常に大きな個人差がみられた。我々のデータは、WADA2012で規定されている30 ng/mLというホルモテロールの尿中濃度の閾値が妥当であることを支持している。


2012年8月2日木曜日

長距離移動で、生体パスポートが変わるのか?

The impact of long-haul air travel on variables of the athlete's biological passport.
Schumacher YO, Klodt F, Nonis D, Pottgiesser T, Alsayrafi M, Bourdon PC, Voss SC
Department of sports medicine, University of Freiburg, Freiburg, Germany.
Int J Lab Hematol. 2012 e-pub
PMID: 22805050

題名:長距離の飛行機移動における、アスリートバイオロジカルパスポートの変化

はじめに
飛行機移動中におきる血液凝集能に関して、脱水や体液移動や体液変化は血液学的な変化を起こしうる。アスリートは、これらの効果がスポーツのパフォーマンスを損なったり、栓塞症のリスクを上昇させたり、血液検査が異常値になって、アンチ・ドーピングにおいて血液検査をモニタリングしている「Athlete's biological passport (ABP)」で間違えてドーピングと判定されるかもしれないことを心配している。本研究の目的は、アスリートが長距離の飛行機移動する前後にABPが変動するのかを検討することである。

方法
15人のアスリートを対象として、8時間の飛行機移動の前後の朝にABP血液サンプルの提供を受けた。さらに飛行機移動の3日後、6日後の朝にも血液サンプルの提供を受けた。12人の飛行機移動をしていない方々にもコントロールとして、サンプルの提供を受けた。

結果
ヘモグロビン値は、アスリート群で飛行機移動後よりも前のほうが高かった(+0.5 g/dL, P-0.038)。似た傾向が飛行機移動後3日間でも確認された。コントロール群では変化がなかった。赤血球%は、アスリート群もコントロール群も変化が見られなかった。

結論
検出された変化は、日中の通常の変動内である。そのため、飛行機移動は血液検査に影響を与えず、血液ドーピングとして間違えられないだろうと考えられる。