2012年6月18日月曜日

アスリートの高血圧治療について

Hypertension update and cardiovascular risk reduction in physically active individuals and athletes.
Phys Sportsmed. 2010 Apr;38(1):11-20.
Oliveira LP, Lawless CE.
Department of Internal Medicine, Cleveland Clinic Foundation, Cleveland, OH, USA.
PMID: 20424397

を主な題材とした。

ざっくりと気になったところをメモ。

physically activeな人間では、一次性二次性高血圧の頻度は一般の頻度の50%程度低いという報告がある。

・フィンランドでのアスリートの高血圧調査では、持久性のスポーツアスリートでは一般に比べて低いが、パワースポーツでは低くなかった。つまり、スポーツ種によって高血圧患者の頻度が異なっているのかもしれない。

・本態性高血圧は、高血圧患者の95%を占める。残りの5%は二次性高血圧であり、この頻度はスポーツ選手と一般のpopulationで変わらない。

・アスリートは、冠動脈の奇形や心筋肥大・催不整脈性の右心室奇形などの検出ができない先天性の心臓奇形のために突然死のリスクがある。これらの病態は高血圧を引き起こすものではないが、高血圧を併発することによって突然死のリスクは増加しうる。

・高血圧の治療のゴールは、アテローム性疾患の予防である。

・高血圧治療の際、非薬物治療は忘れてはならない。

フルーツ・野菜を多く、脂肪を少なくする食事で血圧は、8-14mmHg低下(Dietary Approaches to Stop Hypertension, DASH diet)。

BMI18.5-24.9に保持すると、5-20 mmHg/10 kg weight loss血圧低下。

・利尿薬は、低カリウム血症・低ナトリウム血症などの電解質異常や脱水をもたらし、WADAで禁止されているので使用は限定的である。

physically activeな人では、高血糖や脂質異常症などの代謝異常を引き起こす心配があるが、ALLHAT studySHEP studyではmajor outcomeで有意差はない。

LIFE studyでは、アテノロールに比べてロサルタンは虚血性疾患のリスクを低下させた。

・高血圧アスリートにおけるファーストチョイスはACEIARBだろう。両剤はエネルギー代謝に影響せず、VO2maxを抑制しない。

CCBもエネルギー代謝に影響せずVO2maxを抑制しないが、乳酸蓄積をひきおこす可能性が指摘されている。しかし、first-lineの選択肢である。

beta-blockerは、運動に対する影響やWADAの禁止リストにはいっていることから、first-lineの治療薬ではない。しかし、冠動脈疾患や心不全の場合、第一選択である。

ONTARGET(The Ongoing Telmisartan Alone and in Combination with Ramipril Global Endopoint Trial)で、テルミサルタン単独とラミプリル単独で同等、両剤併用でbenefitは増えないが高カリウム血症・低血圧・腎不全などのリスクが上昇したので、ARBACEIはどちらか単独で用いたほうがよいのかもしれない。現実的にはARBCCBの併用か。

・ジルチアゼムは心拍数を抑えるが、運動パフォーマンスに影響を与えない。

beta-blockerは、最大運動量を低下させる。

エルゴメーターで、アテノロールは運動量を低下させるが、cilazaprilは筋肉を低下させない。

トレッドミルで、アテノロールは運動時間を低下させるがエナラプリルは低下させない。

クロニジンは、運動時のSBPを過剰に上昇させる。

・ニフェジピンとエナラプリルは、運動時の血行動態を変えない。

・ジルチアゼムは運動パフォーマンスに影響しない。

ARBはプラセボに比較して運動容量を改善した。

・エナラプリルとベラパミルは運動容量を減少させなかった。

・エナラプリルとベラパミルは代謝を変化させなかった。

ACEIARBの併用は、VO2maxの増加・ノルエピネフリン、アルドステロンの減少などいいこともあるが、ONTARGETでの両剤併用による副作用リスク上昇を考えると、使用しづらい。

・非ジヒドロピリジン系CCBは心拍を落とすので、使いづらいといえば使いづらいが、上記の報告ではジルチアゼムが運動容量に影響を与えないので第二選択。


まとめ

・筆者らのストラテジーは、以下のとおり。



高血圧患者
臓器障害の評価
(クレアチニン、BUN、心電図、電解質、チロイド刺激ホルモンなど)
本態性高血圧or二次性高血圧の診断
生活習慣の改善
(塩分制限、DASH diet、体重減量など)
1st line
ACEI, ARB, ジヒドロピリジン系CCB
4-6週間後に評価
ジヒドロピリジン系CCB、非ジヒドロピリジン系CCB
4-6週間後に評価
alpha1遮断薬、alpha2アゴニスト、non-competitive athletesではチアジドも(ただし、電解質異常に注意)



(感想)

アメリカでは、保険制度や医療費の問題上、利尿薬投与が多いのでその点で本邦とは前提条件が大きくことなる。アスリートは運動が非常に激しいので、電解質異常が起こりやすいだろうということを念頭におかなければならないのかなぁと思う。その点で、ACEI/ARBの併用は、通常患者へ用いる場合よりも厳格に副作用をチェックしなければならないと。カリウムに注意。


(私の解釈)

ACEIとARB:単剤で使用する。併用ではさらなるbenefitがなくriskのみ上昇。
ジヒドロピリジンCCB:乳酸蓄積の可能性があるが、血圧をよく落とし運動容量に影響を与えないので使用しやすい。
非ジヒドロピリジンCCB:心拍を落とし運動容量を低下させるとおもいきや、実際はそうではないというエビデンスが多い。ジルチアゼムが使いやすそうだ。
beta-blocker:運動容量を低下させる。かつ、スポーツ種によってはWADAで禁止されている。冠動脈疾患や心不全以外では出番なしか。
チアジド:電解質異常、代謝異常などを引き起こす可能性があるので、アスリートには不向き。
alpha2 agonist:クロニジンが運動時SBPの過剰な上昇を引き起こすので、使いづらい。逆に言うと、運動時にはalpha2受容体は過剰な血圧上昇を抑える働きをしているとも言える。


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