2012年5月13日日曜日

ARBは代謝調節薬としてドーピング違反になるのか?

Telmisartan as metabolic modulator: a new perspective in sports doping?
J Strength Cond Res. 2012 Mar;26(3):608-10.
Sanchis-Gomar F, Lippi G.
Department of Physiology, Faculty of Medicine, University of Valencia, Research Foundation of the University Clinic Hospital of Valencia/INCLIVA, Valencia, Spain.
PMID:22130396




題名:代謝調節薬としてのテルミサルタン:スポーツドーピングにおける新しい分野になるか?

WADAは、2012年禁止リストにおいて、いくつかの変更を施した。禁止リストの新しい革新的な変更として、5-aminoimidazole-4-carboxamide-1-β-D-ribofuranoside (peroxisome proliferator-activated receptor-δ [PPAR-δ]-5' adenosine monophosphate-activated protein kinase [AMPK] アゴニスト) とGW1516 (PPAR-δ-アゴニスト)が、2012年禁止リストでは遺伝子ドーピング物質としてではなく、“Hormone and metabolic modulators”のmetabolic modulatorとしてカテゴライズされたことが挙げられる。これは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるテルミサルタンにも当てはまるかもしれない。最近、テルミサルタンが上記に類似の生化学的・代謝学的変化(例えば、ミトコンドリア生合成や筋肉繊維型の変化)を誘導する可能性が示された。我々は、テルミサルタンのようなmetabolic modulatorの乱用がスポーツ界において現実的な脅威となっていくと推測しており、そのためこの問題はアンチドーピングにおける重要な問題として遡上に挙げるべきであると考えている。2012WADA禁止リストは、ドーピング薬としてテルミサルタンをあげていないが、近い将来metabolic modulatorにこれを含むかどうかの議論がおこるだろう。




(感想)

テルミサルタンやイルベサルタンは、論文http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15007034を皮切りに、臨床用量でARBとしての作用に加え、PPARgammaへのアゴニスト作用があるということで、糖尿病や腎症への作用に大変興味を持たれています。製薬会社さんは、それをアピールするために、”メタボサルタン”という訳の分からない名前をつけて、よく雑誌にでていましたね。しかし、このメタボサルタンという名前、残念ながら(当然ながら)世界的にはまったく相手にされていません。Pubmedでは、2011年に一報、2010年に一報、某M下先生の論文でひっかかるくらいです(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=metabosartan)。

"メタボサルタン"のひとつ、テルミサルタンはPPARdeltaへのアゴニスト作用もあるらしいです。この作用はロサルタンにはありません。イルベサルタンにもあるのかは、論文をみつけれなかったので不明ですが、あっても不思議ではありません。PPARdeltaへのアゴニスト作用により、上記のような代謝調節作用があるのでドーピングの対象にすべきではないか?ということですが、果たしてどうなるのでしょうか。

こういう議論を知っていると、例えば有力なスポーツ選手が高血圧でARBを開始するときに、テルミサルタンやイルベサルタンを事前に避けておくことによって、将来注意喚起する必要がなくなるので、楽になりますね。Scientistとしての薬剤師の本領発揮です。

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